2006〜2015年の天気予報ランキング

 天気予報には、「晴れ」「くもり」「雨」「晴れ 時々 くもり」「くもり 一時 雨」など、多くの表現がありますが、一番多く出されている予報は何だと思いますか? 「晴れ」や「雨」がトップに来るとは考えにくいので、「くもり」とか「晴れ のち くもり」などが多そうな気がします。

 2005年の途中から始めた天気予報の収集も10年以上が経過し、データも十分に蓄積されましたので、ここまでの10年間のデータをまとめ、どんな予報がどのくらい出されているのかを明らかにしてみることにしました。

戻る

1.前日発表予報の年間発表回数ランキング

 2006〜2015年の10年間、翌日の天気についての予報は全部で3,652回発表されています。まずは、それを単純に集計してみました。

表1.年間天気予報発表回数ランキング
(前日発表、全3,652回)
順位発表回数天気予報
1652晴れ
2563晴れ 時々 くもり
3406くもり
4332くもり 時々 晴れ
5314晴れ のち くもり
6172くもり のち 一時 雨
7148くもり 一時 雨
8148くもり 時々 雨
9121くもり のち 雨
10120雨 のち くもり
11117くもり のち 晴れ
1291晴れ のち時々くもり
1390
1480 くもり のち時々 晴れ 
1480雨 時々 止む
1644晴れ 一時 雨
1729くもり のち時々 雨
1825晴れ のち一時 雨
1924雨 のち 晴れ
2011くもり のち 雨か雪
2011晴れ のち 雨
229くもり 時々 雨か雪
238晴れ 一時 雪
247くもり のち 雪か雨
247雨か雪 のち 晴れ
265くもり 一時 雨か雪
265くもり 時々 雪か雨
284雨か雪
284雪か雨 のち くもり
303雨か雪 のち くもり
303雪 時々 止む
303雪か雨
332くもり 一時 雪か雨
332雨で暴風を伴う
332
361くもり のち 雪
361くもり のち一時 雪
361くもり 一時 雪
361くもり 時々 雪
361晴れ のち 雨か雪
361晴れ のち 雪か雨
361晴れ 一時 雪か雨
361雪 のち 雨
361雪か雨 のち 晴れ
361風雪強い

 何と、一番多かったのは「晴れ」で、その数は652回、全体の約1/4でした。東京地方は、特に冬場に晴天が続く傾向があるとはいえ、まさか「晴れ」の予報が一番多く出されているとは思っていませんでした。

 次に多かったのが、「晴れ ときどき くもり」、それに続いて「くもり」、「くもり 時々 晴れ」、「晴れ のち くもり」と続き、ここまでがベスト5。「雨」という字が出てくるのは6位の「くもり のち一時 雨」が最初で、そこから雨がらみの予報が10位まで続いています。

 全部で45種類の予報が出されているのですが、その中でめったにお目に掛かれない珍しい予報として、この10年間に1回しか出されなかった予報が10種類ありました。これらは全て「雪」がらみの予報となっています。まあ、東京ならではというところでしょうか。

 ところで、この10年間の天気予報ランキングですが、年ごとの発表数の推移をグラフにしてみたところ、次の様になりました。

天気予報ベスト5のトレンド
    図1.各年の天気予報ベスト5推移

 年によってバラツキが大きいのですが、ちょっと注目したいのは、2006年は「くもり」の回数が第1位となっているのに、2007年以降はその半分程度の回数に減って、そのまま低調に推移していることと、「晴れ 時々 くもり」の回数が年々増加している傾向がみられることでしょうか。ちょっと、この先の動きが気になります。

2.前日発表予報の月別発表回数ランキング

 次に、月別の天気予報傾向を見るため、前日発表予報を月別に集計し、各月のベスト3を示します。

表2.月別天気予報発表回数ベスト3
(前日発表)
第1位第2位第3位
1月晴れ晴れ 時々 くもり晴れ のち くもり
2月晴れ晴れ のち くもり晴れ 時々 くもり
3月晴れ晴れ 時々 くもり晴れ のち くもり
4月晴れ晴れ 時々 くもりくもり 時々 晴れ
5月晴れ晴れ 時々 くもり晴れ のち くもり
6月くもりくもり 時々 晴れ晴れ 時々 くもり
7月くもりくもり 時々 晴れ晴れ 時々 くもり
8月晴れ 時々 くもりくもりくもり 時々 晴れ
9月晴れ 時々 くもりくもりくもり 時々 晴れ
10月晴れ晴れ 時々 くもりくもり
11月晴れ晴れ 時々 くもり晴れ のち くもり
12月晴れ晴れ 時々 くもり晴れ のち くもり

 東京地方の年間の天気予報の移り変わりを反映しているようで、10月から5月の8か月間は「晴れ」が1位で、2位と3位も、ほとんどが「晴れ 時々 くもり」と「晴れ のち くもり」で占められています。これだけ「晴れ」がトップになる月が多いのだから、年間トータルで「晴れ」が1位になったこともうなずけます。

 梅雨のシーズンの6月と7月は、共に1位、2位、3位がそれぞれ「くもり」、「くもり 時々 晴れ」、「晴れ 時々 くもり」となっています。

 また、夏場の8月と9月は、共に1位、2位、3位がそれぞれ「晴れ 時々 くもり」、「くもり」、「くもり 時々 晴れ」となっています。

 このように、月別の天気予報ランキングを見ると、東京の1年間の天気が大きく3つに分けられるようです。

3.発表日別の予報発表回数ランキング

 天気予報には前日発表のものだけでなく、週間天気予報があります。ここでは、発表日別に発表された天気予報を年間トータルで集計し、発表日別のベスト3を示します。

表3.発表日別天気予報発表回数ベスト3
(年間トータル)
発表日第1位第2位第3位
前日晴れ晴れ 時々 くもりくもり
2日前晴れ 時々 くもりくもり 時々 晴れくもり
3日前晴れ 時々 くもりくもり 時々 晴れくもり
4日前晴れ 時々 くもりくもり 時々 晴れくもり
5日前晴れ 時々 くもりくもり 時々 晴れくもり
6日前晴れ 時々 くもりくもり 時々 晴れくもり
7日前くもり 時々 晴れ晴れ 時々 くもりくもり

 前日発表予報では、前述のように「晴れ」がトップでしたが、週間天気予報では少し傾向が異なっています。2日前発表の予報から6日前発表の予報まで、すべてベスト3の顔ぶれは一緒で「晴れ 時々 くもり」、「くもり 時々 晴れ」、「くもり」の順となっています。

 これは推測ですが、天気予報で「晴れ」と言い切るには、かなりの確度で曇らないという予測ができている必要があり、現在の予報精度では、2日以上先の天気を「晴れ」と言い切れるケースは、かなり限定されるということではないかと思います。

 実際に「晴れ」の予報が出されている回数は、前日が652回(1位)、2日前が174回(6位)、3日前が149回(5位)、4日前が107回(6位)、5日前が68回(5位)、6日前が35回(5位)、7日前が16回(5位)となっていて、先の予報ほど「晴れ」が出される回数が減っていることがわかります。つまり、7日後の天気を「晴れ」と予報することは、年に1〜2回しかない程度に珍しいということになります。(詳細データについては、集計結果のファイルを参照願います)

 前日発表の予報では、この10年間に45種類もの予報が出されていたのですが、2日前予報は34種類、3日前予報は31種類、4日前予報は25種類、5日前予報は12種類、6日前予報は8種類、7日前予報は9種類と、先の予報になるほど、予報の種類が減る傾向があります。まあ、遠い先のことになると細かなディテールが減ってきて、アバウトな予報になってしまうという感じでしょうか。

 実際、7日前発表の場合、1位の「くもり 時々 晴れ」が全体の30.9%、2位の「晴れ 時々 くもり」が29.4%、3位の「くもり」が29.1%と、ほぼ拮抗しており、これら上位ベスト3の予報だけで全体の89.4%を占めています(4位は「くもり 一時 雨」で9.9%なのでここまでで99%超)。これだと下駄を転がして天気を占うのと似たようなものにも思えてきますが、もちろん気象庁できちんと検討した結果がこうなったということなのでしょう。(とは言え、『 7日後の天気は「くもり 時々 晴れ」か「晴れ 時々 くもり」か「くもり」のどれかでしょう 』という天気予報だと、どれも大して違わないし、ありがたみがありませんよね。)

4.天気予報の表現について

 上で確認したように、この10年間に発表された前日発表の天気予報は全部で45種類ありましたが、そもそも天気予報は何種類ありえるのでしょうか?

 天気予報は、基本的に、「晴れ」「くもり」「雨」「雪」の4種類の天候と、「のち」「時々」「一時」「のち時々」「のち一時」の5種類の接続詞との組み合わせからなっています。とはいえ、実際の天気予報を見ると、「雨で暴風を伴う」とか「風雪強い」なんていう珍しい予報は別にしても、「雨 時々 止む」なんて予報もあります。

 簡単にするために、「雨」と「雪」をひとまとめにして考えてみます。「晴れ」や「雨」などの天候を「A」と「B」、「時々」や「一時」などの接続詞を「☆」で表すと、天気予報は「A]または「A ☆ B」で表すことができます。「A」が「晴れ」、「くもり」、「雨、雪」の3種類、「B」が「晴れ」「くもり」「雨、雪」「止む」の4種類、「☆」が「のち」「時々」「一時」「のち時々」「のち一時」の5種類となりますが、「A≠B」であることや、「B=止む」は「A=雨」の場合に限定されることなどを考慮すると、ありえる組合せとしては、「A」が3種類、「A ☆ B」が 5×2+5×2+5×3=35種類となり、組合せ上は全部で38種類の天気予報がありえることになります。

 一方、この10年間に実際に出された天気予報は、上にリストアップした45種類の天気予報から「雨」と「雪」をひとまとめにし、さらに「雨で暴風を伴う」と「風雪強い」という特殊なケースを除くと、全部で20種類になります。

 理論上の組合せ38種類と実際に出された20種類との差はどこから来てるのでしょうか? 実は、ありそうなのに実際には出されていない天気予報があるのです。

 例えば、「晴れ 一時 くもり」「晴れ 時々 雨」「くもり 一時 晴れ」「雨 時々 くもり」などの予報は、いかにもありそうですが、実際には1度も出されていません。実際に出された予報を、図2に示します。この図では、天気予報を構成する「A 」と「☆」と「 B」の組合せのうち、実際に出された予報を実線でつないで示しています。線がつながっていない組合せは、ありそうだけど出されていない予報ということになります。
実際に出された天気予報
    図2.実際に出された天気予報

 調べてみると、気象庁が報道機関等に天気予報を知らせるときなどには、「天気コード」という3桁の数字を使用しているようです。天気コードは、「晴れ」が100、「くもり」が200、「雨」が300、「雪」が400などとなっており、例えば「晴れ のち くもり」は111、「くもり 時々 晴れ」は201などとなっていて、全部で122種類もの天気予報の表現が掲載されています。

 このコード表を見ると、「朝のうち」「朝夕」「朝晩」「日中」「昼頃から」「夕方から」「夜は」「夜半から」などの時間帯を特定する言葉や、「山沿い」「海上海岸は」などの場所を特定する言葉なども含まれていますが、これらは少なくともこの10年間、東京地方の天気予報では使われたことはないようです。他にも、「霧」「霧雨」「雷雨」なども含まれています。

 さらに、この天気コードを図2と比べてみると、おもしろいことに気が付きます。

 「晴れ」で始まる天気では、実際には出されたことのない「晴れ 時々 雨」は天気コードにありますが「晴れ 一時 くもり」はどちらにもありません。「くもり」で始まる天気では、実際に出されたことのない「くもり 一時 晴れ」は天気コードにも掲載されていません。「雨」で始まる天気では、実際に出されたことのない「雨 時々 晴れ」は天気コードにありますが、「雨 時々 くもり」や「雨 一時 晴れ」はどちらにもありません。

 天気コードにある天気予報のうち場所や時間帯を特定したものや特殊なものを除いて、図3にまとめてみました。
天気コード
    図3.天気コード(一部)

 図2と比べてみると微妙に異なることがわかるかと思います。どうやら、天気コードには掲載されているものの、実際には使われていない予報が結構あるようです。

 一方、「晴れ 一時 くもり」「くもり 一時 晴れ」「雨 時々 くもり」「雨 一時 くもり」「雨 一時 晴れ」などは、天気コードにも載っていないわけで、天気予報の用語としては最初から使用するつもりがなかったということのようです。

 とはいえ、気象庁の過去の気象データ検索で、例えば東京地方の2016年9月の日ごとの気象データを調べてみると、天気概況の欄には「曇一時晴」「雨一時曇」「雨時々曇」などの表現が出てきます。ということは、これらの表現は天気概況を表す用語としては普通に使われているのにも関わらず、何故か天気予報では使われていない(天気コードに載っていない)ということになります。さらに、天気コードに載っている表現のうち「晴れ 時々 雨」や「雨 時々 晴れ」などは、実際の天気予報では使われていないという構造になっています。

 何とか、ルールを解明しようと思いましたが、『「一時」の後には「雨」か「雪」しか来ない』というのはみつかりましたが、他はそうそう単純なルールでは説明できそうもありません。まあ、それぞれ個別の事情があるのでしょう。

5.詳細データ(2006〜2015年集計結果)

 天気予報集計(PDF)


戻る


最終更新: 2016/10/20
連絡先: tf2